ニコライ・リョーリフ。 『山の上に』
この作品はそのホールの作品です。
1924年
88,5 х 116,0 cm
キャンバス上のテンペラ画
全ての「彼の国」シリーズにもこの絵画『山の上に』にも、1924年にリョーリフ夫妻がシッキムで初めてヒマラヤに触れ合ったときのリョーリフ夫妻の人生が満たされた感覚や思考、そして悟りが反映されている。
ニコライ・リョーリフはシッキムの聖地や修道院を訪れ、チベットのラマの精神的伝統を注意深く研究した。
旅行日記「アルタイ・ヒマラヤ」にて、彼はこのような言葉を残している。:
「私はダリンガ修道院の古い絵画を眺めています。巨匠パドマサンバヴァの偉功です。ここでは、彼の全ての魔術的な行いを見ることができます。巨匠は山の上に飛んで行きます。」
絵画の筋立ては、間違いなく崇高な精神力の現れと繋がっている。作品全体にその象徴が浸透しており、その背後には仏教の神々に関する伝説や神話だけでなく、宇宙の秩序の法則を反映した「生きる倫理」の教えである深い概念も隠されていた。
地球の天辺のさらに上の薄い雲の空間で東洋の特別な衣装を着た人物が空に舞い上がり、高密度物質の世界から精神世界を目指し、遥か彼方の果てを超えんばかりに上昇している。
絵画は飛行の身体的なダイナミクスを伝えているだけでなく、その奥深くに存在する意識の動きや自己改善の道を歩みながらより薄く高いものを目指す精神の労働も伝えている。
この絵画の中では、乳白色の雲海が3つの峰を囲い込んでいる。
その内の一つの峰は靄の絨毯に覆われている。ジナイダ・フォスディクの証言によると、ニコライ・リョーリフは、『山の上に』というエベレストの絵画を高所から描いたとのことだった。
「この峰は世界の母によって定められた。」
だからこそ、ニコライ・リョーリフの同名の作品でヴェールが世界の母の顔を覆っているように、この絵画でも靄がその峰を覆っている。「彼の国」シリーズの『山の上に』は、同シリーズの『深さよりも深い』という絵画の二部作である。
その作品でニコライ・リョーリフは、「明るく幻想的な伝説の世界だけでなく、その世界の背後にある思いもよらない現実」も映し出していた。
ニコライ・リョーリフに関する文献では、この作品は『山頂よりも高く』というタイトルでも散見されるが、この作品名はオリジナルではなく、英語からの文字通りの翻訳である。
ロシア語からの翻訳者:
オレクサンドル・チスチャコフ
翻訳補助:
加藤 はる花