ニコライ•リョーリフ。『古えの蛇』
1924年
74,2 x 117,5 cm
キャンバス上のテンペラ画
絵画『古えの蛇』はシッキムにて制作された。この絵は有名な思想家や哲学者、聖人等を主要人物として描いたシリーズの他の18作品とは異なり、人類第5のエネルギー種が形成された大きな進化のサイクルの始まりという宇宙秩序の現象を描いている。
作品の中でニコライ・リョーリフは有名な古代ギリシャの浅浮き彫り「ルドビシの玉座」(紀元前460年頃)のイメージを引用している。その中央部分には「アフロディーテの誕生」が描かれており、側面には「犠牲を捧げる者」と「フルート奏者」というミステリアスな人物が描かれている。
絵画の5人の主人公は土と水に囲まれており、4人の女性は創造に関わる要素を表している。
フルートを持った女性は音、つまり空気とエーテルを体現しており、もう1人は炎を手に持ち捧げ、中央では2人の女性が土と水を表現している。これらの4つの要素を表す者の力によって、新しい5番目の主人公を誕生させるという秘密の儀式が実現する。
蛇のように流れる黒髪に不思議な服を着た4人の女性は、非常に古いものに関わっている。
彼女らの外見は、ニコライ・リョーリフによる『アトラス』(1921年)の絵画に出てくる青年を思い出させる。
5番目の主人公は何か新しいものを象徴しており、画家は彼女を金髪の巻き毛で描いており、これは人類の5番目のエネルギー種の特徴になっている。
ニコライ•リョーリフによるこの絵画は、海の泡から生まれたという愛と美さの女神であるアフロディーテの誕生についての古代神話を題材にしている。このアフロディーテを、始まりの混沌の中で生まれた炎や光りの体現者である母なる女神だとする芸術的な古代解釈がなされている。
古代中国の巨匠の伝統的な技法で描かれた蛇のイメージの構成を含み、画家は西洋と東洋の芸術の形態の自然な統合を実現することに成功した。
ニコライ・リョーリフの絵画では、燃えるドラゴンの様な蛇が空をうごめいてる。様々な言い伝えの中で多くの解釈が存在するが、古代の至高の側面においては、その蛇は知恵や不死、復活を象徴しているとされている。
1920年代から1930年代、この絵画は多くのアメリカの出版物において「The Birth of Mysteries」(ミステリーの誕生)という名前で複製された。
古代の世界では、「ミステリー」とは特別な聖餐式のことであり、宇宙進化論的および人類学的性質の秘密の知識を紹介するための神聖な儀式であった。
ニコライ・リョーリフは彼の作品の中で大きな進化のサイクルの始まりや、原始的な創造と変容の期間、そして実際のミステリーの誕生の時を示した。
ロシア語からの翻訳者:
オレクサンドル・チスチャコフ
翻訳補助:
加藤 はる花