スヴャトスラフ•リョーリフ。 『カルマ•ドルジェ』
この作品はそのホールの作品です。
1934年
121,5 х 91,0 cm
キャンバス上のテンペラ画
1930年代初頭までの肖像画のジャンルでのスヴャトスラフ•リョーリフの成功は、ヴェネツィア(1930)とニューヨーク(1932)での展示会で賞を受賞したことである。
スヴャトスラフ•リョーリフによる肖像画は実在の人物にそっくりなだけではなく、配色や構成、そして非常に頻繁に背景などを通して、見る人の注意を描かれた人物の内面に引き寄せていると批評家は指摘した。
スヴャトスラフ•リョーリフによって制作された肖像画における背景の役割は、過大評価されているわけではない。
ありのままの自然の姿は、人の考えや思い、意志を反映し現れ、自然と人間は一つになる。その中には東洋の哲学の一番重要な礎の一つ、「万物の内なるの統一」という基本が投影されている。
そのような自然と人間の統合の実例は、「カルマ•ドルジェ」の肖像画であり、この作品が描かれた時期はスヴャトスラフ•リョーリフが「中道の教義」を研究していた時期と一致する。
カルマ•ドルジェは最も崇高なチベットラマであり、彼は何度もクルー渓谷のリョーリフ族を訪れていた。スヴャトスラフ•リョーリフは1936年5月28日に以下の言葉を残した。:
「ミラレパ聖人の生まれ変わりと考えられているラマは、私たちに2度会いに来た後、それから10年間、修行のために離れています。正直に申し上げて、彼は今まで私達が見た中でも唯一の真の聖人であると言わざるを得ません。彼は、彼の理想であるミラレパ聖人と同じように、ミラレパの時代の仏教の教えに従いそれを実行しているからです。」
その2年前画家は、ヒマラヤの前で瞑想しているラマ、「カルマ・ドルジェ」を描いた絵画を制作している。(1934年、現ラトビアのグンタ・ルザイトのコレクションにある)
「カルマ・ドルジェ」(1934年)の肖像画では、スヴャトスラフ•リョーリフは溶けない雪で覆われたヒマラヤの峰のイメージと、この偉大な禁欲主義者の精神的向上心を重ねる目的の為に高嶺の山を背景に置いた。
チベット瞑想の修行の基本に「欲望や思いを、純粋な悟りへのエネルギーに変えよう」というアイデアがある。この哲学的なアイデアを、スヴャトスラフ•リョーリフは肖像画の彩りを通して伝えている。
崇高なラマの紅の衣装と、透き通るヒマラヤの雪は、温かさと冷たさや、明るさと暗さのようなコントラストを生み出している。そのコントラストは人間の基本的な要素を最高へと、純粋な精神力へと導く変化のシンボルのように見える。
カルマ•ドルジェは明るい表情で遠くを見つめ、彼の指は神聖な方法によって折りたたまれている。
この絵画からは、巨大な精神浄化のエネルギーが感じられる。
1974年にスヴャトスラフ•リョーリフはこの絵の他のバージョンも描いていた。
ロシア語からの翻訳者:
オレクサンドル・チスチャコフ
翻訳補助:
加藤 はる花