ニコライ•リョーリフ。『ヒラ山のムハンマド』
『ヒラ山のムハンマド』
「東洋の大旗」シリーズ
1925年
73,8 x 116,9 cm
キャンバス上のテンペラ画
絵画『ヒラ山のムハンマド』は、ニコライ・リョーリフがカシミール地方にて制作した作品である。
ムハンマド(モハメッド;アラブ語で「賞賛された」の意 570-632年頃)はアラブの預言者であり、イスラム教やイスラム教徒の協同体を最初に設立した人物である。
伝説によると、ヒラ山で長時間の修行をしていたムハンマドの目の前に、天上のアッラーの玉座の下で保管されている書物『コーラン』の一部分を教示するために大天使ガブリエル(ジェブライル)が現れた。アッラーに代わり、大天使ガブリエルはムハンマドに対して全能の一つである神の教義を人々に説くという責任を負わせた。
ニコライ・リョーリフは自身の旅行記『アルタイ・ヒマラヤ』の中で、次のように語った。:
「歴史家アットタバリは『預言者と王の歴史』という著書の中で、ムハンマドの予言的召命について興味深く語っています。」
アットバタリ:
「神の使者(ムハンマド)の最初のお告げは、夜明けのように現れた真理の黙示でした。彼は静けさの中に孤立し、ヒラ山の洞窟に留まりました。そして永遠が現れる前に真理神が降臨し、彼にこう伝えました。:
『ムハンマド、あなたは神の使者である。』
『私は膝まずきます。』
神の使者は言った。
『そして待ち続けます。』
その後、彼は再び私(ムハンマド)の前に現れて言いました。
『ムハンマド、私はガブリエル。そしてあなたは神の使者である。』」
絵画『ヒラ山のムハンマド』では、焼けた砂漠の上に今にも溶けそうな空気が震え、予言者の目の前に大天使のお告げの雲が凝結する。
絵画はヨーロッパの伝統的な技法で描かれたが、イスラム美術の原則も取り入れられており、そのためムハンマドの顔は描かれておらず、大天使は炎の雲として現れている。
ニコライ・リョーリフの絵画では、旧約聖書や新約聖書、そしてイスラム教の教義が大天使ガブリエルのイメージを通して組み合わされ、ここでの大天使の出現は、キリスト教とイスラム教の深い共通性を示すものとなっている。
ロシア語からの翻訳者:
オレクサンドル・チスチャコフ
翻訳補助:
加藤 はる花