ニコライ•リョーリフ。『建設者 セルギイ』
『建設者 セルギイ』
「東洋の大旗」シリーズ
1925年
74,5 х 118,0 cm
キャンバス上のテンペラ画
絵画『建設者 セルギイ』は、カシミールにてニコライ・リョーリフによって制作された。ラドネジのセルギイ(1314?–1392)は、ニコライ・リョーリフの芸術の中でも最も重要な人物の一人である。
「聖セルギイはロシアの精神文化の建設者であります。」と、ニコライ・リョーリフは聖セルギイについて記している。
「そして聖なる教師セルギイの労働について他の人に語る時、他宗教の教徒は彼の姿の前で敬意を示さざるを得なくなります。ラドネジのセルギイは、至聖三者聖セルギイ大修道院の創設者であり、その修道院則は協同体の深い理解を含んでいます。彼は教会の指導者であり、政界人です。ロシア国家の基盤を強化し、ドミトリー・ドンスコイの志を支援し、クリコヴォの戦いにおいて勝利出来るよう、恵みを捧げました。」
ラドネジの聖なる教師セルギイは、スラブ文化におけるただ唯一の人物であったりロシアの聖人であるという意味をはるかに超えていた。彼の名は、全人類の精神的進化の新しい段階を予期した善へと導く指導者の名前である。
「...彼の名こそが神聖な名であり、人々を団結させ、明るい明日へと向かうための呼びかけであります。」
と、ニコライ・リョーリフは記した。
ラドネジのセルギイの姿の最大の特徴は、彼が肉体的にも精神的にも日々絶え間なく働いていることである。歴史家ヴァシリー・クリュチェフスキーは、古代ロシアの文章を引用しセルギイが新参者に宛てたの言葉を残している。:
「貴方方はこの場所の労働、飢えと渇きに耐えることができますか?ここで貴方に何が待ち構えているかを知り、悲しみや貧困、苦悩、切なさ等のあらゆる種類の辛さや不足に耐える覚悟をし、休息のためではなく、労働のために...そして精神的に戦う覚悟をしなさい。」
セルギイについての伝記には、
「自らの手で森から薪を運び、割り、井戸から水を運び、各方丈にバケツを置き、すべての兄弟たちのために食事を用意しました...。つまり、彼はすべての人に奉仕していました。」
と、ある。
ニコライ・リョーリフは、ラドネジのセルギイの精神的な偉業について次のように記した。:
「この聖なる名を口にするたび、その名は私たち全員に絶え間ない明るい労働と無私の創造を促します。聖セルギイは全ての年齢の人々にとって真に尊敬すべき存在であります。これらの労働によって、聖なる教師はロシアの精神文化の礎石、不滅の石を築き、それを世界の崇拝の宝庫に納めました。」
絵画『建設者 セルギイ』の中で、ニコライ・リョーリフは肉体労働と精神労働の一体性を投影し、ロシアにおける精神文化の建設の象徴として三位一体の修道院を建築する禁欲主義者を描いた。
セルギイからそう遠くない所に、巨大な岩のように微動だにせずじっと座っている熊がいる。エレーナ・リョーリフはセルギイに関するエッセイの中で、次のように記した。:
「セルギイは方丈の入り口で、飢えで弱った巨大な熊を見つけました。セルギイはその熊に同情し、方丈からパンの欠片を持ってきました。毛むくじゃらのお客さんが平和に食事をし、それからというもの、しばしば訪れるようになりました。セルギイはその熊と自分の備蓄を分け合った結果、熊は手なずけられました。このように、聖なる教師の精神は来る偉業の前に鍛えられ、人々の精神の教育者となり、ロシアの大地の建設者となりました。」
※エレーナ・リョーリフによるエッセイ、『聖なる教師 セルギイの大旗』より
ロシア語からの翻訳者:
オレクサンドル・チスチャコフ
翻訳補助:
加藤 はる花