ニコライ•リョーリフ。「リグデン・ジャポの指揮」
1926年
75,5 х 142,3 cm
キャンバス上のテンペラ画
ニコライ・リョーリフは、中央アジア遠征(1924-1928年)のルート上にあるモンゴルの首都ウランバートル(ウルガ)で、壮大な絵画『リグデン・ジャポの指揮』を制作した。この絵画は1925年末に構想され、シャンバラの伝説の土地とその国を司る王を題材にしている。
古代仏教の資料によると、ヒマラヤには隠された聖地「シャンバラ」があり、そこは地球の宇宙進化を導き、人類を新たなエネルギーレベルに引き上げる偉大な賢者ら、マハートマーの住居だとされている。
ユリー・リョーリフの作品『時輪タントラ(カラチャクラ)の研究へ』には、過去と未来のシャンバラの元首ら全員のリストが掲載されている。
仏典によれば、第26代シャンバラ元首、リグデン・ジャポが到着するのは、約500年後だそうだ。彼の治世中には、闇を倒すための戦いが世界中で起こりその戦いで闇は打ち負かされ、その後、光の時代が到来し、正義の法則が再び広がるはずだ。
リグデン・ジャポの名前は、多くの伝説で取り巻かれている。
『アジアの心』という著作の中でニコライ•リョーリフは、リグデン・ジャポの到来に関するラマの予言を引用している。:
「まことに、大いなる到来の時が迫っています。私たちの予言によると、シャンバラの時代はすでに始まっています。シャンバラの元首であるリグデン・ジャポは最終決戦のために無敵の軍隊を準備し、彼のすべての協力者や軍隊の指導者もすでに転生しています。」
そしてニコライ・リョーリフはこの絵画で、思考によってどれだけ離れた場所であっても地球上で起こっている全てのことを把握し、紅の輝きと共に王座に座りながら、戦士達に命令を下し、価値のある人々を即座に助け出している疲れ知らずのリグデン・ジャポの姿を描いた。
作中のリグデン・ジャポの片足はすでに王座から降ろされており、これは彼が間もなく地球に到来するということを示している。リグデン・ジャポは左手に、仏陀の教え、最初の説法、そしてその後の仏教の普及の象徴である法輪を握っている。
ニコライ・リョーリフは次のように記した。:
「…祝福されたリグデン・ジャポは使者たちに命令しているように見えます。ここ、ラダックの黒い岩の上には強力な元首が現れます。使者である騎士たちは深い敬意と共に、リグデン・ジャポの命令を受けるためにあらゆる場所から彼のもとへ急いで集まり、そして偉大な知恵の教訓を携えて世界中を駆け巡ります。」
絵画『リグデン・ジャポの指揮』では、ニコライ・リョーリフは図像学的な描写と一般化されたリアリズムという2つの描写方法を大胆に組み合わせた。リグデン・ジャポは正統的に描かれており、彼は開かれた岩の内部に現れた巨大な幻のようである。
シャンバラの王、リグデン・ジャポはまだ顕現世界に現れていないが、もうすでに騎士たちに命令を下し、彼らはリグデン・ジャポの意志を全ての土地に届けるために急いでいる。
開かれた岩の中は紅に照らされている。仏教ではそれは善の色であるが、モンゴルでは戦争を意味する。
画家は、光の総力が共通の善の名の下に勝利する戦いが近づいているということを、この絵画を通して伝えている。
ロシア語からの翻訳者:
オレクサンドル・チスチャコフ
翻訳補助:
加藤 はる花