ニコライ•リョーリフ。「祖先」
1919年
48,0 х 97,3 cm
キャンバス上のテンペラ画
この『祖先』と言う作品は、ニコライ・リョーリフがイギリスに滞在した際(1919-1920)に制作されたものであり、「人間の大祖先」(1911年)という初期の作品のテーマを発展させたものである。
自然の懐の中、古代のスラブ人がフルートを演奏している。丘を朝霧が覆う。沿岸の牧草地も、森の茂みや丘に戯れるように流れる小川も、太陽が金色琥珀色の光で優しく照らしている。
男が座っている丘では、ヒグマも同じように座っている。人の心の奥底から湧き上がるような優しい音楽は、
"全ての土地の陽光あふれる陽気な声…草、水、すべての動物、そしてすべての人間…"
という単一の調和で構成される。
ニコライ•リョーリフに関するモノグラフの著者であるセルゲイ•エルンストは、この筋立てを古代ギリシャ神話の音楽家兼歌手であるオルフェウスのものと比較していた。オルフェウスの調べは、素晴らしい力と幸福感を奏で、オルフェウスがそれを奏でた時、人間も、動物も、神も、自然自体さえも夢中にさせていた。
この絵画の中では、フルートの優しい音色に魅了された熊たちがスラブオルフェウスの音色を聴いている。古代には、スラブ人はこれらの力強い動物を自分たちの守護神のように崇拝し、特別な宗教儀式を通して敬意を表していた。
“熊が人間の祖先だと見なされていたことの印として、氏族の長老たちは犠牲の儀式の中では熊の毛皮を着用していた。”
リョーリフは古代に遡りつつスラブ部族の歴史と文化に言及した。この絵画の筋立ての中では、地上のすべての生命の統一を強調し、人間と自然が共鳴することによって生まれる美やその調和を表現するようにしていた。
ロシア語からの翻訳者:
オレクサンドル・チスチャコフ
翻訳補助:
加藤 はる花